第54回『IF I AM』(5/10)
更新日:2012年05月18日
こんにちは、東北大学文学部2年英文学専修の玉田優花子です。
『IF I AM』には何度かお邪魔しているのですが、今回はゲストライターを担当させていただきます。
長いブログになってしまいましたが、議論のリアル感をお伝えできたらと思います。
さて、第54回『IF I AM』。ファイブブリッジからお送りしています。
今回は、恒例の『根本聡一郎の学生復興会議』です。
学生復興会議とは?
その週のテーマのもと、学生が本気で議論するもの。「現状から未来につながる」ような話をしていきます。
放送は3週に1回。これまで7~8回放送しました。
この学生復興会議、視聴者のみなさんも参加できるんです。チェックインすると、Twitterから意見を発信できます。
視聴者の意見を紹介する時間は毎週設けられていますが、この学生復興会議も例外ではありません。議論中にみなさんの意見を取り上げることで、リアルな議論とネット上の議論の両方を可能にしているのです。
今週のテーマは『政治』。
この大きなテーマを、3つの具体的な項目に分けて議論します。
1. 震災時の政治について感じたこと
2.震災後の政治について感じること
3.これからどのような方向に進んでいくべきか
各項目の中で視聴者のみなさんの意見を取り上げつつ、進めていきます。
ゲストの自己紹介
菊田洋平さん(東北学院大学4年)
学生団体 C.CHECK で、学生にとっての政治家を身近にする活動をしているそうです。自称ゆるふわ系?(笑)
「みなさんが絡みやすいようなことを言っていきたいなと。」頼もしいですね。
笠原龍樹さん(宮城大学事業構想学部4年)
見学のつもりだったけれど飛び入りで参加することになりました、とのこと。
「素人の視点から議論に入っていこうと思います。」実際、鋭い視点から議論に参加して下さいました。
青木雄太さん(東北大学農学部3年)
NPO法人 .jp (ドットジェイピー)にて、議員のもとで学生がインターンシップをするのをサポートしているそうです。
現在もインターンシップを募集中だそうです!
園部幸久さん(東北大学経済学部4年)
経済経営系のケーススタディを行う団体 E.B.S.G. に所属されています。
最も盛り上がった学生復興会議『原発ディベート』に出演された、E.B.S.G. の阿美さんの推薦で来て下さいました。
1. 震災時の政治について感じたこと
自己紹介が終わったところで、早速1つめのテーマへ。
MC根本さん「震災といっても広いので、3月中、くらいに絞って進めていきます」 まずは順番にそれぞれの意見を。
菊田さん「わりと肯定的な見方をしています。民主党の対応が非難されたが、自民党のそれまでのしがらみ、管理体制の甘さが出たのも事実。自民党なら原発事故が起こらなかったと言えるのか、同じだったのでは、という意味で『肯定的』です」
笠原さん「民主党、自民党のくくりを越えた行動がミッションだったのでは。スピード感を期待する意味で、連携よりむしろ党派を崩した動きが効果的だったと思う。政府が大きく動かなかったため、地域ごとに復興せざるを得ず、復興の時間に地域差が出たのも事実」
この意見に関連して、青木さんは「3月に大連立の必要性があったのか」と問います。
「まずは状況把握、原発もいかに現状を抑えていくかが先決だった。管さんが自衛隊を10万人動員したときは心強く、アメリカの支援はこの10万が効いたともいえる。緊急度でいえば原発問題が先だが、現状把握の意味では10万人の判断はベストだった」
最後に園部さんの発言。
「政府、首相、自衛隊に対する評価アンケート(4月実施)を見ると、自衛隊の評価が高い。ただ、データに現れたものは純粋な『良い』『悪い』ではないと思うんです。自衛隊は身近なので動きが『把握できる』が、政府などは身近でなく『把握できない』を表したもの」
青木さん「確かに枝野さんは毎回会見に出ていて、枝野寝ろ、って言われてましたよね。枝野さんが動いているのは見えていたけれど、他の動きは見えなかった」
園部さん「把握できない、評価できない裏の動きがあります。政府は現在の取り組みをアピールすべき」
MC「うん、管起きろ、もあったしね。」
(一同、笑)
「でもアピールすべきと一概には言えないかも。アピールする代わりに実務をしていた可能性もある」
さて、そろそろTwitterで視聴者の意見を取り上げていく時間です。
大連立で何ができたのか
MC「こんな意見がきてます。与党と野党が合わさっていたら、実際何ができたのか」
「これには意見があります」と青木さん。
「与党と野党が合体するって怖いことなんですよ。価値観をひとつにする必要があるから。震災時に求められたことは本当に多岐にわたり、議員はそのひとつひとつに価値観を持っている。一党主導の場合は価値観を統一せねばならず、議論が省かれるとなるとこれは問題」
与野党が合体しても、何もできないかもしれない。
MC「大連立をすると、外部のチェック機関がなくなる。野党はこの役割を果たしてますが、この点からはどうですか?」
菊田さん「全く根本が言いたいこととかぶった(笑)原発に関しても、野党という批判的なスタンスでいたことは大きな意味があった」
MC「3月中に管首相に問責決議が出て、一日議会がなくなった日があった。あれは与野党があったからこそ起きた問題だと思うんだけど、みなさんはどうですか?」
「与党野党がある・ないに関わらず、」と青木さん。
「自民党が一日を使ってでも管さんを下ろし、他の人がやるべきと判断した、ということに意味がある。そのくらい議論が紛糾していて、問責決議案もそのときに出さねばならぬほどスピードが求められた。結果的に裏目に出て、一日無駄にしたけれど」
リーダーシップ論
あの状況で首相の対応が悪いと議論してたこと自体ナンセンスでしたよね、といった視聴者の意見から話が広がります。
MC「じゃあ誰がよかったのかというのがありますよね」
青木さん「それがまさしく矛盾なんですよ。価値観を統一して大連立をしろと言いつつ、国民はついていく気がない。スピードを求めれば、そもそもリーダーがいるのだから従うのが当然。でも議論すればいい結果がでるのは当然だから、難しいところ」
MC「強いリーダーシップに日本人はアレルギーを持っているかどうか?」
菊池さん「日本では強いリーダーシップが求められるのに、やろうとする人が出ると独裁と非難される」
青木さん「俺がやってやるぞだらけだったから、問責決議できた」
笠原さん「私の解釈からすると、おれがやってやるぞ=リーダーシップではない。国民がついていきたいと思えるものを持っている人が、リーダーシップのある人」
園部さん「管さんに足りなかったのは、メッセージの発信力。東電に乗り込んでいったのはトップとしてどうだったのか。肯定派も否定派もありますね」
「国民はやる気よりも具体的な方策が欲しかったのでは」
園部さん「判断を下して、下にやれっていうだけで良かった。下が動ける環境を」
青木さん「管さんはフォロワーをつくるのが苦手だった。自分を、政府を信じてもらえなかった」
菊田さん「政府を信じてもらえなかった、というのは違うと思っていて。信じていなかったら暴動が起きたはず。なんとかしてくれるから、今助け合ってやっていこうぜ、の動きはあった」
MC「政府を転覆させたり、暴動を起こしたりはなかったが、だからといって信用していたか?いろんな見方がある」
人を従えるのがうまい人は頼み上手。
MC「確かに原発事故はこの人、って頼んでればよかった」
笠原さん「間接的に関わってる国民を従えるのはちょっと違う。国民が求めるリーダーシップは別のところにある」
2. 震災後の政治について感じること
具体的には4月以降の政治についてです。
菊田さん「国民はみんなメディアに振り回されていた」
笠原さん「直近の記憶は何もない。被災地でボランティアをしていたが、復興に携わっていたのはボランティアと現地の人で、政府の存在を感じる瞬間が特になくて。それに被災者として、誰かにやってもらおうではなく、自分がどうにかやっていこうと思った。新聞、ニュースを見て政治の動きを知っても、そこになにか壁を感じた」
金銭的援助のありかた
青木さん「被災者への金銭的補助はもっと考えられなかったのか。震災で保障があっても、仕事に就いた瞬間とれてしまう。事業主レベルだと保険がおりず、失業保険はそもそもない。雇用創出でもっと動けなかったかな。制度というところで復興の力になるべきで、お金を元手に新しく何かができた」
笠原さん「働く場所がなく、人口が減っていく。補助金がなくて保障を用意できなかった」
園部さん「仕組み、制度面をもっと早くと思っていた。結局なんだかんだ言われるんだから、私はこれをやりますという覚悟が必要だった」
青木さん「アプローチの仕方を見直せた。事業主を助けることが、結局国民を助ける」
MC「企業にアプローチできたのに、個人を助けてしまった」
園部さん「段階に応じた役割があり、段階に応じた役割を求める必要があった。やってほしいこと全部を一番上に言ってもだめで、求めたことをやってくれる対象に求めねば。この段階を認識している国民がどこまでいたか」
政治家に必要な能力
青木さん「実際政治家ってめちゃくちゃ頭いいんですよ。結局価値観の戦い。言ってることはみんな正しくて、その中でどれがベストか決める。これが民主主義であるから、進まない感じがもどかしく感じる。求められる政治家像は、人の価値観をぶっこわして、というか言いくるめて、それでもなおかつ政治家を続けられること。民主主義のなかの独裁者。話のうまいやつ」
笠原さん「ただし支持されることが目的ではないから、成果を出せなければ」
MC「今は支持されないと受からないから、本当にやりたいこと言えないよね」
園部さん「被災地に行っても、何か狙ってきたんだろうな、と勘ぐられてしまう。EXILEが来たらみんな喜ぶのにね。誰も疑わない(笑)」
八木山のパンダ
Twitterにて、仙台の八木山にパンダを置いている話題が。
パンダを置く意味。他にできることがあったのか。
笠原さん「人を呼べる」
青木さん「どれくらいの経済効果を持つかが大事。誰がその波及効果を計算してるのか」
MC「東北は被災してる人いっぱい、誰を呼び込むの?」
菊田さん「全国から来ることに期待ですね」
続・政治家に必要な能力
責任感、洞察力、情熱…政治家に対して求めすぎている、という意見。
青木さんの言うところの価値観の戦い、にも是非が。
青木さん「民主主義がよくない。価値観の戦いをしないなら、ひとり独裁者をたてればよい」
MC「善意の独裁者がベスト」
青木さん「民主主義のありかたについて、教授と話をしたんですよ。決めるところばっかりに焦点がいってるけど、実はそうではない。リーダーが全体にできることは、落とされていった少数意見を拾いつつ、全体の幸福を考えること。仮にこれが正しいとすれば、議員、リーダーはたくさんいる必要がない」
Twitterより。パンダが総理大臣になればいいんじゃね?
たまにこういうゆるいのいいね、と場が和みます。
3. これからどのような方向に進んでいくべきか
ここまでで1時間経過。普段なら番組終了の時間ですが…
MC「まあUSTREAMのいいところは延長できるってことです(笑)このテーマが一場重要なので、どんどん延長していきます。まあさっきの話でも、これからの方向性について少しずつ出てきましたが」
SNSを利用した政治
菊田さん「SNSを使って直接民主主義を実現してはどうか。間接だから不満なのであって、直接自分の言ったことが実現されるなら、ある程度悪い結果がでても受け入れる」
笠原さん「匿名性は取っ払ったほうがいいのかな」
MC「直接民主制に戻す、それがネットがあればできるってことですね」
笠原さん「今、俺の一票と政治に詳しい人の一票が同じ価値だけど、直接民主制でそこにバイアスをかけてしまうのはおもしろい。ある種性善説、詳しい人に任せよう。」
MC「それってある意味間接民主制に近いかも」
青木さん「インターネット投票は .jp も研究していて、 .jp は推進派。直接民主主義はどうなんだろう…最近SNSの怖さを感じていて。というのは、民衆の方で偽装されないか。Twitterだと別アカウントを作れるし、基本的にはタイムラインに流れてるのしか見れないから、例えば反原発が大きいからってなんとなく反原発、と複数アカウントで流すことができる」
MC「そうやって扇動する民衆が出てくるんだな」
青木さん「結局マスコミになるんですよね、その人たちが。」
MC「僕は政治に使うならfacebookかなと。顔と名前があるから、あまり無責任なこと言えない」
「そもそも、既存のSNSにとらわれる必要もないよね」
直接民主制をめぐる諸問題
菊田さん「増税のような、国民にとって明らかにマイナスなことは通らなくなる。システムとして、これだけはやんなきゃいけない部分は別枠で分けるべき」
青木さん「難しい話だけど、特例って出したら終わり。ルールになる。何が国民の意見を振り切ってでもやらなきゃいけない政策なのか、そこの議論がすごい難しい」
MC「それに関して意見が。直接民主制は地方レベルならあり、国は別。地方分権も進めてしまおう」
青木さん「これおもしろい」
(直接民主制は価値観のぶつかりあいが常時起きてしまう気がする、というTwitterの視聴者の意見を見て。チェックインした人の呟きは、このようにゲストも見られるように、大きいスクリーンに映るんです)
青木さん「価値観のぶつかりあいは考えてることが違うから起こるのであって、地方レベルなら多かれ少なかれ、価値観の差は小さい」
直接民主制の定義がよくわからない、という視聴者の声も。
菊田さん「人を介さない。政策の是非を国民が決める、国民が選んだ政治家が決めるのではなく」
MC「政治家をなくしてしまうってこと?」
菊田さん「うん。もちろん執行部とかはいるだろうけど、なくすという極論もありかも」
青木さん「その話だと、立法をする人がいなくなる。立法する人がいて、立法したものの是非を国民が判断したらいいんじゃない。説明して、理解を得なきゃいけないから、手間っちゃ手間。それに、議員なくしちゃえって言うけど、議員の仕事はどこまで?」
ネット選挙運動とネット投票は異なる、まずはネット選挙運動の解禁、と視聴者より。
園部さん「そうだね。ネットを使って選挙の公報をするのと、わたしたちが投票するのはまた別の話」
MC「橋下市長のTwitterは注目してる。橋下さんは選挙運動中は呟かなかったが、前もって呟いていたことを国民がリツイートすることはできたので、十分選挙運動になる」
Twitterを利用した選挙の公報は、広がり続けることが可能。
一票の格差なくなる?
「国政に限って言えばなくなる」
菊田さん「人口が集中してる地域の意見は通りやすくなる。地域ごとの格差」
笠原さん「地域によって政策のメリット・デメリットが違う。一票の格差とは違ったかたちで、格差は生じる」
MC「なるほど、となると国政に直接民主制の導入は厳しそう」
議員数は減らすべきか増やすべきか
視聴者より「議員なんて半分はいなくなった方がいい」
MC「議員減らすべきか増やすべきかって話はありますよね」
青木さん「貴族院の名残はいらない」
MC「貴族院には二つの見方が。踏襲的に政治家の子どもが政治家になるという面と、もうひとつ、貴族って身分があったから貴族院が必要だったという面。今は貴族がなくなったんだから、参議院はいらないんじゃないか」
「二院制自体はけっこうあるよね」
MC「ただ、参考までにアメリカの上院議員数は約20人。日本は衆議院も参議院もはるかに多い」
菊田さん「議員数を減らすと、一票の格差と矛盾する。減らすと格差はさらに大きくなる」
MC「東京の議員数を増やす話がある。あれだけ人口いるんだから」
園部さん「選挙区割りを見直せともいえる」
笠原さん「減らすと公的資金削減にはなる」
MC「あれだけ議員がいて代弁してくれてるのかを考えなきゃいけない」
青木さん「減らしたら漏れてくる政策が出てくる。それだけ価値観の数が少ないわけだから。…どうなんだろう。アメリカと比べると確かに」
菊田さん「アメリカはひとつの州が国みたいな感じだからまた違うよね。役割から逆算できればベストだが、それができるのって議員なわけで、結局堂々巡り」
お金をどこに回すか
菊田さん「高齢者、もしくは若い人にお金が回るシステムを。高齢者は病気なんかに備えてお金を使わないし、核家族化して一人暮らしだったら自分で持ってるしかない。これはいわば死んでるお金であって経済が回らないが、この問題は高齢化社会が進むにつれ深刻化してしまう。一番使う子育て世代に回るように」
笠原さん「お金を持ってないけどお金を使う層にお金を使わせるか、お金を持ってて使わない層に使わせるかですよね」
MC「ベーシックインカムという言葉もあるよね。全員にお金を配っちゃうことによって、全員がお金使える状態にするっていう」
そんなこんなで、既に延長してから30分経過。そろそろまとめに入ります。
MC「政治っていうテーマは広すぎたけど(笑)これからひとつひとつの制作に関して議論できたらいいな、と。今日出たものを持ち帰って、各自考えてもらって、それからまたこういう議論の場を設けたいと思います」
MC根本さんの膝の上で、IF I AMのキャラクター『タビ―』がバイバイして番組終了です。
充実した議論でした。「持ち帰る」ことの重要性も、個人的にはすごく感じます。
それでは、長文駄文におつきあいいただきありがとうございました。
先に書いたように、学生復興会議は3週に1度行われます。今後の学生復興会議も、是非是非ご覧くださいね!
———–
以上の記事は、ゲストライター玉田優花子ちゃんに書いてもらいました。
『IF I AM』にもちょくちょく出てくれて、可愛い上に思慮深い彼女はとても気になる存在だったのですが、
今回は「政治」という難しい議論の内容を読みやすくまとめてくれて、文才もあるんだなぁ、と感心しました。
たまゆかちゃん、ありがとう!
『笑顔311』では、このように番組の内容についてこのブログにまとめるライターのほか、取材や配信をするスタッフなど、メンバーを大募集中です。
インターネットでの情報発信を通して復興支援をしたい方、ぜひ力を貸してください!
募集中のメンバーについての詳細はこちら >> メンバー募集
第54回『IF I AM』配信時の皆さんのつぶやき